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大きな屋敷が立ち並ぶ古い集落に建つ、茶道を嗜む亭主夫婦とその子供のための木造2階住宅です。

一般的な居住プログラムに茶室が加わるプロジェクトでした。

新たに区画された整形な敷地に、北側道路側に駐車スペース、南側をプライベートな庭としてスペースを確保すると、自動的に建築スペースは設定されました。

さてここで、LDKに個室と寝室で構成するプログラムに茶室を付加すべしなのですが、外部要件で切り取られた建築スペース、たかが建坪16坪のどこに配置するかがこの計画のハイライトとなりました。

プライベートな茶室となると、利休に習い、外部から閉じられた特別な空間である必要があると思いました。

また俗っぽくしたくはありませんので、居室に隣接すべきでないと思いました。

となってくると、住宅に併設は不可能となり禅問答。だったら離れでと思うのですが、そのような予算は捻出できません。

そこで設定した柵から開放すべく、居住空間の余白に組み込めないかと考え、1階と2階の、その間を茶室にすることにしました。

1階の上が茶室であり、2階の下が茶室です。

そうするとLDKや個室の風景、人間のふるまいまでも、その茶室のインテリアと"見立て"られそうで、「余白」として「閉じられた特別な空間」すなわち「茶室」として成立すると思いました。

その茶室の余白としての純粋性を担保するために、構造計画も工夫しています。

開口6.37m、奥行8.19mの外壁で囲まれた内部空間の茶室の層には柱一つ落ちていません。

2階の桁部分にスパン6.37mのトラス梁をかけ、そのトラス梁から鋼棒M16で2階床梁を吊り下げることで2階の床は成立しています。

余白により上下階を切り離し、その余白をぐぐっと拡張することで、上下階がひとつながりのワンルームとなりました。

狭小ながらも、自然光はあちらこちらから差込み、あかるく開放的でダイナミックな空間になりました。

炉の前でいずまいを正したとたん、ひとつの住宅が、ひとつの茶室になるようでした。

パッシブハウス・ジャパン主催のエコハウスアワード2017ノミネート作品です。

​燃費や性能は以下リンクでご覧いただけます。

http://passivehouse-japan.org/award2017_nominee/no_17/?_ga=2.252510657.95857496.1498433789-348673170.1498433789

設計:川島裕一建築設計事務所
構造設計:柳室純構造設計
施工:夏見工務店
構造:木造在来工法
規模:地上2階建て

敷地面積:191.37㎡(58坪)

延床面積:106.52㎡(33坪)

所在地:滋賀県
写真:山崎純敬

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